もしコイツの仕業だと世間にバレたとしても。
母親譲りの演技力で、周りを騙すことなど可能だろう。
…現に中学の頃から今まで、多くの人を、その嘘の笑顔で騙してきているのだから。
稲生はそこで、ふと、最悪の展開を考えた。
俺はかつて、コイツの大事な彼女・白川雪愛を、たった数日であっても監禁した。
それを、コイツは間違いなく知っている。
俺は、
―――1番敵にしていはイケナイ人物を、
敵に、まわした…の……カ?
自然と体が震えてきた。
稲生は、視界の滲んできた瞳を、若王子貴魅へと向けた。
カレは相変わらず、変わらぬ笑みを浮かべていた。
そして、その笑みのまま、若王子貴魅は、
―――罰を、クダシタ。
「ようやく僕が何故、中岡と名乗ってキミに近づいたかわかりましたか?
せいぜい、僕があの時から考えていた復讐を、受けてくださいね?」
生きて帰れない。
稲生は何故か、そう悟った。