彼は、その人物が、嫌いだった。

憎悪に近い感情を抱いていた。




ソイツは、いつも誰かに囲まれているにも関わらず、誰とも深く関わらなかった。

そのくせ、嘘に近いような笑顔を振りまいて、誰をも寄せ付けた。

まるで、麻薬だ、アイツは。




いつも笑顔で、器用に何事もこなしてしまうソイツが、彼は嫌いだった。

周りの空気に流されるような形で、メアドを交換したけど、内心は聞きたくなんてなかったし、消したくてたまらなかった。

だけど、そのメアド目当てで、女子に自分は囲まれた。

例え女子の目当てがソイツであっても。

当時の自分は、女子に興味を持っていたから。

嬉しくて、消したくても消せなかった。




高校は、自宅から近くにした。

学力も自分に合っていたし、何より確信していたから。



中学の時、理由もないのに殺したいほど憎んでいたソイツが、その高校に進学しない、と。




ソイツの家は、近所でも有名なお金持ちの家庭の出身で。

頭も良く、成績優秀で真面目な優等生のソイツは、お金持ちが多く通う進学校に通うんだと決めていると思っていた。

ようやく、何で憎いのか自分でもわからないアイツから、離れられる。

―――そう、確信していた。







だから入学式の日、酷く驚いた。

新入生代表として、ソイツの名前が呼ばれた時は。