コツ、コツ、と靴音が聞こえ、その音は段々近づいてきた。

自然と、体が強張る。

自分は頑丈に縛られているから、逃げることも抵抗されることも不可能だ。

一体、何をされるのか。

彼は、底知れぬ恐怖に襲われていた。





暗闇に目が慣れてきたのか、靴音が聞こえなくなった頃には、しっかりと視界にカレの姿をいれていた。




やっぱり、中岡だ。

俺と同姓同名を持つ、コイツだ。




彼を襲い、縛り付けたカレは、にこやかに微笑んでいた。

笑みを浮かべているのに、目の奥が笑っていないことは、一目瞭然だった。




彼は身震いをした。

確信した。




コイツは、軽々と罪を犯せるような奴だ。

笑顔で相手に近づき、相手が苦しむ姿を、変わらぬこの笑みで見ているんだ。

コイツは、そういう奴だ。




そう考えて、ふと思い出す。

思い出したくない忌まわしき過去。

たまに悪夢として彼を苦しめる、消してしまいたい若き頃の彼。









その頃に、イタ気がする。

こんな、妖しい笑みを浮かべ、腹の底では何を考えているのかわからなくて、

たった1人の少女を、異常なほど溺愛していた、1人の男子生徒が。