★NOside★
海独特の潮の匂いが鼻を掠め、彼は目を覚ました。
自分はどこにいる?
キョロキョロ辺りを見渡すが、どうやら倉庫のような建物の中にいるようだった。
辺りを見渡し、そこで初めて自分の身に起こった異変に気がついた。
自分はいつの間にか、頑丈そうな太いロープで、身動きが取れない状況になっていた。
しかも、驚くべきことに、ロープだけじゃない。
念には念を入れよ、の言葉通り、ロープの上から鎖が巻かれていた。
鎖はロープ同様腰だけでなく、手足も巻かれていた。
目隠しはされていないものの、口はガムテープで押さえられているため、話すことは出来ず、助けを呼ぶことも出来なかった。
その場で動き、ロープと鎖を外そうと試みるが。
頑丈で太く、簡単には切れないロープと鎖は、取れる気配が全くしない。
こんな強く縛られたのなら、例えスポーツをやっていて、筋肉が体中についていたとしても、解くのは困難に近いだろう。
彼は運動なんて歩く程度しか行わないし、スポーツというスポーツは高校を退学したあの日から今まで、やったことなんてなかった。
仕事はしているものの、パソコンに向かっての作業なので、体力に自信はない。
スポーツや運動に関しては素人の彼が、逃げられるはずがなかった。
「…おや、目覚めましたか」
気を失う、つい先ほどまで聞いていた、涼しげな声。
昼間のはずなのに夜に近い倉庫らしき建物内に、その声が響き渡った。
彼は確信した。
自分を、俺をこうしたのは、中岡と名乗るコイツだ、と。