一旦家に戻り、奥さんに道案内をしてくると言ってきた彼は、ラフな出で立ちで家を出てきた。
「じゃあ、行きましょうか。
どの辺案内すれば良いですか?」
「そうですねぇ……」
僕は頭の中に、この辺りの地図を思い浮かべる。
確かアノ場所は…どこだっけな?
「さっきお菓子を渡しに言った人に聞いたんですけど、この辺に海が見える場所があるって聞いたんですけど……」
勿論、嘘。
だって僕、この辺りになんて引っ越して来ていないから。
「海が見える場所…。
あぁ、遥華港(はるかみなと)のことですね」
「そこに行ってみたいんです。
今度、妻と娘を連れて行きたくて…」
「良いですね、行きましょうよ」
僕らは、僕が最初から行きたかった目的地・遥華港へ向けて歩きだす。
そこへ着くまでに、僕はコイツと色々話した。
今の仕事は何をしているか。
奥さんとはどこで知り合ったのか。
いきなりプライベートに土足で入りすぎたかな、と焦ったけど。
彼は疑うことなく、スラスラ答えてくれた。
…馬鹿だなぁ、本当に。
遥華港。
そこが、お前の、
死に場所になるのに。