「どちらに越してきたのですか?」
家の門から出てきて、僕の隣に並ぶコイツ。
…本当、馬鹿は変わっていないんだネ。
「この先の曲がり角の先です」
「え、あんな遠い所からわざわざここまで?」
「ええ。
この先に小学校があるでしょう?
わたしの娘が、そこへ通うことになっていまして。
通りすがる方にもご挨拶を、と思いまして」
「へぇ、礼儀正しい方なんですね」
「僕の妻が、そういうのに厳しいんですよ。
…先ほど抱っこしていたのは、お子さんですか?」
「え?ええ。
もうすぐ3歳になります」
「そうなんですか」
しかし、こんな所で他愛もない話をしているのも時間の無駄だ。
いくらメイドに伝言を頼んだとはいえ、いつまでも雪愛を1人にさせておくわけにはいかない。
…そろそろ、始めるか。
「そういえば中岡さん。今お時間ありますか?」
「今ですか?ありますけど」
「そうですか!
実は引っ越してきてから、この辺を歩いていないんですよ。
もし宜しければ、この辺を案内してくれませんか?
同性同士、仲良くしたいと思っていますし」
僕がにっこり微笑むと、彼は
「わたしで良ければ、喜んで」
とアッサリ了承してくれた。
本当、僕たちの周りは、
扱いやすい、良い子たちばかりだネ。