そのままって……。
「雪愛が、友達と海外留学ってこと…?」
「そう。
いくらユキちゃんが好きでも、許せるよねそれぐらい」
「……」
「てか、それぐらい許してあげられないと、ユキちゃんから束縛激しい彼氏だって嫌われちゃうよ?」
「………」
「ちなみに、先生に連絡したのは俺。
ユキちゃん、電話苦手みたいだから、俺が代わりにしたんだ。
そうしたら、ユキちゃんの担任に、俺お兄さんだって間違えられたんだ。
ユキちゃん、お兄さんいないみたいだろ?」
これは…
嘘?本当?
中学の頃、ある稲生に関する噂が流れていた。
コイツは笑顔で、サラッと嘘をつくと。
それを完璧な隙のない笑顔で言うから、殆どの人が本当だと信じてしまって。
だけどほんの数人には、それが嘘だとバレていた時もあった。
嘘?本当?
コイツの言っていること、信じて良いのか?
僕はスマホを取り出し、雪愛の番号へ電話をかけた。
稲生からのメールに書かれていた通り、雪愛へは通じなかった。
「そろそろ良いかな、王子。
俺は王子みたいに、軽々サボれないんだよ。
ユキちゃんのこと、邪魔しないであげてネ?」
ヘラッと笑った稲生冬樹は、そのまま屋上を出て行った。