自分の席へ向かい、鞄の中からスマホを取り出す。
ちなみに待ち受け画面は、雪愛。
ロックを外して、メールの受信履歴を開く。
僕はラインなんてものはやっていないから。
…あった。
稲生冬樹、どこかで聞いた名前だと思った。
2日前、僕にメールを送ってきたんだ。
稲生冬樹は、中学が一緒の、唯一の男子。
イケメンとかで有名だったのを覚えている。
3年時にクラスが一緒で、メアドを交換しないか誘って来たんだ。
<久しぶり、王子。
俺のこと、覚えてる?
同じ中学だったんだけど。
王子って、ユキちゃんと付き合っているんだな。
可愛いよな、ユキちゃん。
…勘違いするなよ?
お前の彼女を奪うほど、俺は身の程知らずじゃねーからな。
そのユキちゃんなんだけどよ。
ケイタイが壊れちまったみたいでさ。
俺が代わりに、王子にメールうってんだ。
ユキちゃん、友達と一緒に、海外留学に行くみたいだ。
心配するな、早めに帰るそうだ。
ユキちゃんのこと、海外留学行かせても良いだろ?
ユキちゃん、海外へ行くのが夢みたいだったんだ。
応援してやれるよな、彼氏なんだから>
このメールに僕は、行ってきて良いと返事したんだ。
友達なら、安心できたから。
いくら雪愛でも、友達がいるのなら、楽しんできてほしいから。
もしかしてこの時した、
僕の判断は、
間違っていたのか―――?