ホームルームが終わり、クラスメイト達は1時間目の授業の教科書などを用意し、仲の良い友人の所へそれぞれ散っていく。

僕は立ち上がり、廊下を歩く担任の背中に声をかけた。






「ど、どうした?」

「あの、雪愛は……」

「何だ、聞いていないのか?
突然海外留学が決まったみたいで、お兄さんから連絡が来ているぞ。
彼氏であるお前が知らないなんて、不思議なモンだな」





担任はそのまま踵を返し、職員室へ向かい歩いて行った。







可笑しい。

やっぱり、可笑しいよ。

雪愛は一人っ子のはずだ。

本人がそう言っていたんだ、間違いない。




お兄さんって、誰だ?

僕が休んでいる間に、何があった?




廊下の真ん中に佇んでいると、クラスメイトの女子が、先生を追いかけていく姿が見えた。

先生に話しかけ、何かプリントを渡し、こちらへ戻ってくる。

僕は早歩きで彼女の前に向かい、その前に立った。