ポケットの中からそっと一枚の紙切れを取り出して見つめる。



“膝枕券”



壱さんがご褒美にくれた“膝枕券”。



壱さんはああ言ってたけど、これを使う事なんてないだろうなって思ってた。


だって、十夜が素直に膝枕をしてくれるなんて思わなかったから。


でも最後にダメ元で頼んでみようかな。



……最後ぐらい、いいよね?










「ねぇ、十夜」


「あ?」



煙草を吹かしながら視線だけあたしの方へと向けた十夜は気だるげな表情をしていて、あ、無理そう、と直感的に思った。


まぁ、駄目だったら潔く諦めよう。



「煙草吸い終わったらさ、“膝枕”してくれない?」









「………は?」


「………」



……ですよねー。


手に持っていた“膝枕券”をヒラヒラと見せながらそう言ったあたしを、訝しげに見てくる十夜さん。



十夜さん十夜さん、イケメンな顔が崩れてますよ。



どうやら十夜はあたしの言った事が理解出来なかったらしく、ジッとあたしを見つめたまま難しい顔をして何か考えている。



うん、まぁ、そりゃそうだよね。


あたしが“膝枕券”を持ってる事も知らないだろうし、何より、あたしがそんな事を言うとは思ってもいないだろう。


理解出来なくても仕方ないよね。