「分かった」


「……っ」



不意に届いたその言葉に、ビクッと身体が震える。


同時にズキンと心が痛んで、胸元をギュッと握り締めた。




「言えるもんなら言ってみろよ」


「……え?」


「まだ十夜に言ってねぇんだろ?」


「……うん」


「だったら十夜に言ってみろよ」




……どういう、こと?



煌の言ってる事が分からなくて、顔を顰める。


そんなあたしの表情に、煌がククッと愉快げに口角を引き上げた。



「アイツが“抜ける”って言って納得する訳ねぇからな。だから言ってみろよ」


「………」



……何、それ?


そんな訳……。



「アイツはぜってぇ許さねぇ。誓ってもいいぜ」


「………」


自信満々にそう言う煌に、あたしは何も言い返せなかった。










──ガチャ。



「悪い、待たせたな」



タイミングが良いのか悪いのか、気まずい雰囲気の中十夜が帰ってきた。



「じゃあ行ってくるわ。また後でな」


「あぁ」



すぐに立ち上がった煌は、「まぁ頑張れよ」と一言だけ残してリビングを出ていく。






……“まぁ頑張れよ”、か。




チラリ、二人掛けソファーへ座ろうとしている十夜を盗み見る。


十夜はソファーに深く腰掛けた後、ポケットからライターを取り出して煙草に火をつけた。


何をしていても様(サマ)になる十夜に目を奪われて釘付けになる。





……ねぇ、十夜。


あたしが鳳皇を抜けるって言ったら反対する?


抜けたら寂しいって思ってくれる?



ねぇ、教えてよ十夜。