「は?」



煌の気が抜けた声に、全身の力がフッと抜けた。



まだ理由も言っていないのに、全て伝え終えたかのような感覚に陥って。

ハァと小さく息を吐き出す。





「お前、何言ってんだよ」



俯いたあたしに煌が強張った声色でそう聞いてくるけど、何て返事したらいいのか分からなくて。


きゅっと口を真一文字に結んだ。





「今言った事、もう一回言えよ」



地面を這う様な低い声と、突き刺さりそうな視線。


有無を言わさないその命令に、固く結んだ唇が再び開く。




「鳳皇を……抜ける」


「………」


「……それ、本気で言ってんのかよ」



少し間が空いて、ハァと呆れた様な溜め息が落とされる。



「……うん」


「理由は?」


「……っ」




やっぱり、聞かれるよね。



「理由は……」


「凛音、目を見て言え」




……目を見て?



その言葉にゆっくり頭を上げると、煌の真剣な瞳が真っ直ぐあたしを見据えていて。


「……っ」



何も、言えなかった。


だって、こんなに真っ直ぐ見られたら言えないよ。



嘘なんて、つけない。