「何が“許してやる”だ。テメェは何やってんだよ!」


「……ママ、暴力反対」


「ママじゃねぇっつってんだろ!」


「ソーリーソーリー」


「テメェ、シバく」


「痛い痛い痛い!ごめんってばー!」



ったく、冗談も通じないの!?



こめかみをグリグリしてくる煌に待ったをかけるけど、無視。力を緩める気配はない。


なんてこった。これじゃあ黒烏の総長と同じじゃないか。


いや、あたしはちゃんと許したし、決してコイツと同じじゃない。




「……てか、さっきのは何だよ。ムサイの腕挫十字固めってのはこうだろうが」


「……む」


「イデデデデデデデ!!」



仰向けに転がっている黒烏総長の腕を持ち、グリッと一捻りする煌のを口を尖らせたまま見つめる。


技を掛けられている黒烏総長さんはあまりの痛さに悶絶。


「んで、ここはこうだ」


そんな男に見向きもしない煌は、もう片方の腕に足を引っ掛けて挟み込んだ。


それを見て「あ、なるほど~」と感心するあたし。


そんなあたし達のやり取りを一刀両断したのは、他の誰でもない我等が総長、大魔王十夜様で。


「煌」


その声にビクンと飛び上がった煌がゆっくりと振り返った。


かと思ったら、凄い勢いでこっちを振り向いてきて。


「凛音!何やらせてんだよ!」


「はぁ?」


あたしのせいにしやがった。


意味分かんないんですけど……!



「お前が中途半端な技かけるからいけねぇんだぞ!」


「……は?はぁー!?中途半端じゃないし!これでも“女版ムサイ”って呼ばれてんだからね!」


「はぁ?何が“女版ムサイ”だよ!誰だか知んねぇけど全然ムサイを分かってねぇな!」


「ちょっと!言っとくけど優……!」


……っとヤバイ。もう少しで優音の名前出す所だった。