「うっそ」
やばい。
そう思った時にはもう遅かった。
嬉しそうに笑みを浮かべた男は今までの忍び足から一転し、まるで獣の突進の様に真っ直ぐこっちへと走ってきた。
ちょっ、嘘でしょ!?
アンタさっきまで見つからないように忍び足してたじゃん!!
敵なのに、助言したくなるほど広場のど真ん中を突っ切ってくる黒烏の総長。
「オイッ!!平本見つけたぞ!!」
案の定、走り出して直ぐに鳳皇メンバーに見つかってしまい、追い掛けられる羽目に。
っていうか平本って誰!?
まさか、あの総長の名前!?
っていうか、こんな状況で馬鹿男の本名とか知りたくなーい!!
そんな事を思っている内に、直ぐ傍まで迫って来ている男。
どうする?
なんて考えてる時間はなかった。
ここまで来たらやるしかないでしょ。
っていうか、アイツから逃げるなんて冗談じゃない。
そんなのあたしのプライドが許さないっての!!
そう心の中で叫んだあたしは、壁から勢いよく飛び出した。
「は!?凛音!?」
陽に呼びかけられたけど、勢いづいた足はもう止まらない。
男に向かって一直線に走っていく。
と、その時。
視界の端っこに十夜達を捉えた。
四人揃ってる所を見ると、どうやら他の幹部は倒したみたいだ。