「……ってか、弱すぎじゃね?」
「同感」
ホント、陽の言う通り弱すぎ。
もう少し持ち堪えてくれたら参戦出来たのに!
「あーあ。シラケた。凛音、バレる前に帰るか」
クルリと踵を返し、バイクある方へと歩いていく陽きゅん。
……って、ちょっと待って。
あれってもしかして……。
「陽!ちょっと待って!あれって黒烏の総長じゃない!?」
広場の端を壁づたいに歩いている一人の男。
微妙な明るさだから確信は持てないけど、あの奇抜な赤髪は多分そうだと思う。
「アイツ、最低だ」
コソコソしてる所を見ると、もしかして逃げようとしてるんじゃない?
「っていうかただの馬鹿だろ。普通、自分等の倉庫捨てて逃げねぇし」
「言えてるー」
戻ってきた陽が、再び壁からにょきっと頭を出してハッと鼻で笑う。
「陽、あの総長どうするよ?」
「……うーん。出口は此処しかないみたいだし、出てきたら捕まえるかー」
「えー、陽きゅんそれナイスアイデーア!」
「発音悪すぎだろ!」
「うっさい!」
「にゃはは……っと電話だ」
壁から離れて、ポケットの中をゴソゴソと探る陽から視線を戻し、男の様子を窺う。
と。
「え」
こっちを振り返った男と思いっきり目が合った。