傘下に何かあったんだ。


きっとそう。


だって、みんな顔から笑顔が消えてるから。







「壱、彼方と陽を乗せて火皇へ行け」



一分もしない内に寝室から出てきた十夜が壱さんにそう指示を出した。



それに「分かった」と返事した壱さんは、ソファーから立ち上がって車の鍵を手に持つ。


そんな壱さんの後に続いたのは陽と彼方。



あたしは立ち上がる三人の姿をずっと見ていたけど、何も言ってあげれなかった。


ただジッと見ていただけ。




だって、何も言えない。


あたしがさっき言おうとした事を考えたら、とてもじゃないけど何も言えなかった。


自分の事しか考えていないあたしが何も言える訳がない。



「……っ」



そっと俯いて、拳を強く握り締める。



と、その時だった。


三人に声を掛けられたのは。



「凛音、行ってくるな!」


「りっちゃん、ちゃんと留守番しとけよー」


「行ってくるね、凛音ちゃん」



慌てて顔を上げると、目に飛び込んできたのは三人の笑顔。



陽、彼方、壱さん……。



その笑顔に涙が出そうになった。