「なんですって……ッ!」

 あからさまな侮辱に遥香が抗議しかけると、セクター長が腕で制した。
 ふたりの間に割って入り、仲裁をはじめる。


「悠真。今は、そんなことを言っている場合じゃないだろう」

「こんな時だからこそ、言うんだ。兄貴も身内だからって甘やかしすぎだ。他の人間と同じ対応しないと、あんたも責任者としての能力が疑われるんだぞ」


 うわぁ。すごい正論。
 ぐうの音も出ないほど、主張は間違ってない。


 とてもグリンピースが食べられない子とは思えない見事な理論展開だよ。

 桜沢姉弟と比べるまでもない。彼の意見は正当性がある。


 のにもかかわらず。
 今度は、セクター長が重い溜め息をついた。


「悠真。なら、俺も言わなければならない」


 神妙な面持ちで責めるような口調だった。


「母さんから聞いたぞ。また将生に食事を作らせたり、掃除をやらせているそうだな」


 ぉふッ!
 意外な方向からの攻撃!

 悠真クンも予想外だったらしく、一瞬たじろいだ。