親友の憧れの人なんて、私にとっちゃ雲の上の存在だ。一緒にいるだけで無駄に緊張する。


 まだ寒気はするし、具合もよくない。
 けど、隣に立つ雑賀クンが抱えるようにして、支えてくれてる。


 おいおい。どんなサービス中なんだい。
 まぁ、うっすらと体温を感じて寒気は和らぐけどさ。


 あ、白衣から洗剤のいい匂いが……って、違うっつの。


 密着してるせいで、心臓が落ち着かない。
 動揺してるし、動悸も治まらない。


 体調が悪くなきゃ、おいしいシチュエーションなんだけど。
 背筋に張りつく寒気で、否応なしに理性を意識させられる。

 そのすぐ側で、雑賀クンはしきりに腕時計を気にしていた。


「今は七時半を過ぎたあたりですけど……ここまでされると厄介ですね」

「あぁ。本格的に攻めてきてる。おかしいな」

 同じように時計を凝視した拓真氏が相槌を打つ。
 うーん。さすがは第七セクターの責任者。それに、確か心霊現象の専門家だったな。