しかし、作業中に誤って指を怪我してしまう。
職人の血液も、またその人形に付着した。
彼は修理こそしたものの、完成した人形の前で首を吊って亡くなった。
周囲には、夜中に不審な物音がして眠れないと零していたという。
殺された一家。
気が狂れた男。
修理した職人。
恨みつらみ、憎しみと無念。
触れた者は、狂気に呑み込まれる。
深く強い念を吸った雛人形は、しばらく流浪の旅をする。
転々と持ち主を移動し、迎え入れた家族に災いを振りまく。
噂を聞きつけた僧が封じるまで。
二度と人の手に渡ることのないよう、ついには骨董屋の倉庫に押し込められた。