これを投げつけたんかい。
私を殺す気か!
ぶるぶると怒りと鈍痛に震えれば、背後から呑気な声が聞こえてくる。
「うーん。数値は5000以下か。思ったほどの威力じゃなかったわね……抵抗かけるまでもなかったわ」
爆発を起こしておいて、ちっとも悪びれてない。
こぶのできた頭部をさすりながら、振り返る。
ようやく黒煙が天井へと立ちのぼり、室内の景色が浮かんできた。
ちょうど、ステージのような台座から女性がひとり飛び降りた。
白衣姿には、異様な暗視ゴーグルを装備していた。
「まだまだ改良の余地がありそうね。次の実験は、もっと封印を緩めてみましょ」
すたすたと部屋の中央に歩み寄る。
そこには、テーブルに置かれた雛人形がある。
さっきの爆発で内装の壁や床はあちこち煤けてるのに、並んで座る男雛と一緒に新品同様に変化はない。
ただ、気になる点がある。
そのふたつの人形、どちらも顔が和紙のようなものに包まれていた。