見慣れたセクター長の研究室は、いつも整理整頓され、実験をしているとは思えないほどの綺麗だ。


「……すると、今回は損害も怪我人も出てないんだね。なら、報告書を出してくれればいいよ」



 柔らかで、落ち着く低い声音。


 思ってもみなかった反応に、わたしは目を瞬かせた。


「え、それだけですか……?」


 さすがに減俸とかも覚悟してたんだけど。


 おずおずと視線をあげた先には、白衣姿の上司がいる。
 先に出てこない言葉の代わりに、くすりという笑声が耳に届いた。



「将生の性格上、わざとやったんじゃないってわかるから。ただ……次からは、もうちょっと爆発の規模を抑えてくれる?」


 困ったような笑顔は整っていて、周囲には慈愛に満ちた優しさが漂う。


 あぁ。
 いつ見ても素敵すぎる。
 物心つく前から、ずっと眺めていても飽きることがない。うっとりしてしまう。

 この笑顔を見るため、様々な努力をしてきたし、これからもするだろう。

 でも、ここでぼやっとしてはいけない。