非常に稀少なミラクル体質だが、羨望という対象にはなれない。
オカルト関係者からは無能扱いされることが多いからだ。
マイナスの力を受けつけないのはいいが、感じることもできない。
研究者にしろ、霊術士にしろ、目指すなら他の人間よりも努力が求められるだろう。
聴覚のない音楽家や味覚の利かない料理人のようなもの。
全くいないわけじゃないけど、わざわざ踏み込むほどの世界でもない。
科学より直感が優先される。第六感が自分や依頼人の生命を左右するのだ。
他の職能で食べていく方が無難とされている。
こいつ、わかってて働いてんのかしら。
研究所の警備員ってあたり、かなり悟った選択してるじゃない。
同情と疑問を混ぜた視線で見つめていると、悠真クンが彼の手を振り払う。
将生が背中をさすることで、かえって気分が悪くなったらしい。
顔をしかめながら、スマートフォンを取り出した。
「もういい。兄貴に連絡する」
え。
それは、ちょっとお待ちになって。