人知を超えた存在を舐めてようものなら、とんでもない目に遭う。



「でも、でも……さっきは力の消耗は早いって……」

「だからです。これだけの人数を相手にすれば、一気に底がつく。全て使い切る前に、自分たちが優位に立てる状況に持ち込む気なのかも」


 希望的観測じみた反論は無意味だった。

 向こうは長い年月を経て、怨念を溜め込んだ存在。
 じり貧になればなるほど、切羽詰まって襲いかかってくる。



「う……」


 悠真クンが、いきなり額を押さえてうめく。
 心なしか、顔色がよくないし、頭痛でもこらえてるみたいだ。


「すごく寒い……まるで真冬の外みたい」


 二の腕をさすりながら呟く玲奈。
 吐く息は、すでに白い。夏の夜には似つかわしくない現象。


 ヤツら、だんだん本性を見せてきたわね。
 人ならざる者がいる空間は、自然と気温が下がる。

 散々、ビビらせて混乱させようってわけね。
 自分たちが主導権を握るために。


 ただし、ここでひとり空気の読めないヤツがいた。


「悠真、大丈夫かー? 井上の姉ちゃんといい、風邪でも流行ってんの?」