いつもこんなんじゃ、悠真クンの苦労は計り知れないわね。可哀想に。



 とはいえ、私の人生には関係ないのでまるきり放っておく。


「……助け、誰を呼ぶ?」


 今、もっとも重要なのはこの研究室からの脱出だ。
 もうすでに二度ほど失敗しているため、人選は慎重に吟味しなければ。


 そんな気持ちを込めて雑賀クンに向き直る。
 彼も少しだけ黙考してから、ゆっくりと答えを返した。


「一番、無難な選択は桜沢さんでしょうね。今の事態がバレたら大事ですし、彼女の責任問題に発展しかねません。
 対処するにしても、桜沢さんの意見は必要です。あの人形について最も詳しい情報を知ってるはずですから」


 なら、話は決まったわね。
 ポケットからスマートフォンを取り出す。


「早いとこ来てもらいましょう。これだけ人数もいれば、手出しもできないでしょうし」

「……それについては、やや疑問が残ります」

「え」

 さくさくと話を進めていたのに、突然、水を差す。
 何か他に問題があるのだろうか。


「今は、午後七時を過ぎたところです。向こうが長期戦を考えていたら厄介ですよ」

「まさか……」