これまでの経緯を聞き終えるなり、悠真クンは拳を固めた。
「こ、の……」
ぶるぶると白手袋を震わせ、こめかに青筋が浮かんだ瞬間だった。
「スカタンッ!」
「ぁだッ!!」
ゴンッと将生の脳天に拳を落とした。
同時に、玲奈が血相変えて叫ぶ。
「悠真くんッ!?」
「おまえは、どうしてそう無駄に事情を引っ掻き回すんだ! いつも言ってるだろうが。おまえは始終、落ち着きがないんだ。他人の話を聞かないんだ。
だから、むやみに歩き回るな。しゃべるな。触るな。息もするな。
人間、何もしないという選択はマイナスな印象として受け取られがちだが、おまえは唯一の例外だ。何もしなければ、人類は今日も平和でいられる」
「……そこまで言うこたないだろ」
頭を抱えながら痛みに耐える将生だが、殴られるよりも鋭利な言葉で傷つけられる。
わかっちゃいたけど、悠真クンって容赦ないな。
冷たい視線は心臓に突き刺さりそう。おまけに、あんな美形の顔立ちで罵られたら立ち直れないわ。
あまりにも激しい悠真クンの激昂に口を挟めずにいると、ふたりの間へ玲奈が割り込む。