「……ああ」
「彼女は三城 玲奈【みき れいな】。この研究所の最大出資者·三城グループ総帥の孫娘よ。
あの娘はここの研究員でもあって、民俗学見地からの浄霊·除霊アプローチが主な専門なの。
それに……見れば、わかるでしょ?」
「はぁ……」
雑賀クンの助けを借りて、椅子に座り直す。
横目で確認すると、彼らを見つめたまま生返事をする。
言外に含ませた意味に、気付いてくれたようだ。
じっと将生を見つめる玲奈の瞳は、どこか熱っぽい。
温室育ちのせいか、慣れない人間との会話はぎこちない場合が多い彼女なんだけど、桜沢·弟にかぎっては例外らしい。
精一杯、話を繋げようとする努力が見える。
「あのふたりの仲は、この第五研究所最大の謎よ」
ぼやく雑賀クンに教えてあげると、「……なるほど」と軽い口調で納得する。
そうなのだ。
将生と玲奈の関係は、いまだに誰も解けない難問だった。
三城総帥の孫娘で、奥手なお嬢様である彼女を狙っていた男たちは多い。
誰もが勇猛果敢なアプローチを繰り返すも、玲奈はは全く気付かない。