恨みがましく呟いてしまう。


「あーあ。厄年でもないのに、本当ツイてない……」


 この世に、ツイてないひとは他にごまんといるのに。

 どうにも失恋や祝い事だけで、気分が落ち込む。


 こんな時は、とことん飲むにかぎる。


 帰り際、ついでに呑み仲間を誘うため、隣の研究室を覗いてみよう。
 すでにスマートフォンで用件は伝えていた。

 大の酒好きだから、よっぽどのことがないかぎり、絶対ついてく





 ドンッ!
 突然の揺れで、足元が派手にふらついた。


 地震か?
 前のめりになったおかしな体勢で静観するも、フロアの床は震えていない。


 代わりに、目の前にある『12号 研究室』と掲げたプレートがカタカタと揺れていた。


 ドアは固く閉ざされてはいるが、隙間から黒い煙が流出している。
 続けて、二度三度と激しい衝撃に襲われた。


 揺れの原因は、間違いない。
 急いで鞄を漁り、IDをカードリーダーに差し込む。



「遥香! あんた、何やってんのッ!?」



 シュッと開いた自動ドアをくぐると、