一抹の不安が胸を巣食う。

 現時点では、人形の攻め手を封じただけだ。問題解決というより、現状維持、膠着状態といったところ。
 きっと、雑賀クンは人形の力が尽きるのを待ってるんだろう。

 けど、空間を切り張りする呪いの力って、そんな短期間に底をつくもの?



「たぶん、大丈夫ですよ」

 穏やかな口調で雑賀クンが語りかけてくる。

「この研究室と外側のわずかな空間しか干渉できていません。規模から見て、長くは保ちません」

「……本当?」


 つい、上擦った声で訊ねてしまう。
 実はさ、雑賀クンったら何気に手を握ったままなのよネ。

 どういうつもりなのかしら?
 内心、落ち着かない動悸を感じながら耳を澄ませる。

「はい。確実に力の消耗が早いはずです。生きている人間、三人を相手にするんですよ? 呪いの力といっても、直接的に僕らを攻撃するほど強いものではありません。
 ひとりになるか、視線を逸らさないかぎり、絶対に安全…………」


 とまで、言いかけて。
 突然、どこからか軽快なメロディーが流れてくる。