「よく怖い話にあるでしょ。物音や声は聞こえるけど、実際に動いているものは捉えられないってヤツ。あれは生きている人間には間接的にしか、力を使えないってことなの」
「ふ、ふーん?」
自分ひとりしかいない家の中で物音がする。探し歩いて、荒らされた形跡があるとか。
しばらく音沙汰のなかった友人の声が聞こえたのに、後から第三者から亡くなっていたことを知らされた。
しかも聞こえた日時には、友人が病院で昏睡状態だったという。現実的に耳にすることはできないはずだとか。
それらの原因はいまだ解明されてないけど、生きている肉体相手にできることが限られてるのは間違いない。
「特に、視線は有効よ。海外には【邪眼(じゃがん)】とか【邪視(じゃし)】って呼ばれる力があると信じられてるの。
ギリシャ神話のメデューサって女神を知ってる? 彼女と視線を合わせた者は、全身が石化してしまうという……あれも邪眼の一種よ。
目は口ほどにものをいうって諺もあるでしょ。視線だけで伝わる力があるのかもしれないわ」