「きっと、この人形が持った力で空間を切り張りしたんでしょう」

「ど、どゆこと?」

「おそらく、研究室だけを孤立させて入り口を全て一カ所に集中させたんです」

 無限にループしますよ。きっと。


 抑揚のない雑賀クンの声音。
 それとは裏腹に、立てた仮説は物騒だった。


 つまり、ドアを開けようが窓を開けようが、入り口は一カ所に繋がってるってこと?
 だからドアにいた女があっという間に、窓へ瞬間移動したように思えたわけね。


 雑賀クンの言いたいことが理解できた直後、さっと血の気が引いていく。


 これって、空間をねじ曲げてないか?
 恨みつらみだけで、物理法則を無視したのだ。

 強いエネルギーを感じずにはいられない。


「そ、そんなこと……」

「ええ。どんな死霊でも、簡単にはできません。桜沢さんも、かなり気合い入った人形を手に入れたなぁ……」


 ぶつぶつと零すぼやきには力が入ってない。

 すごすぎる。
 ちっともこたえてない。あるいは、顔に出ないだけ?


 どっちにしろ、雑賀クンの口調と仮説にギャップがありすぎて怖い。
 もし、彼の予想通りなら、どう対処すればいいのか解らない。