あら。意外に無難な選択ね。
女の正体を知るため、研究所に設置された監視カメラを利用する気だ。
それに、この12号研究室は一階にある。
ドアが駄目なら、他の出入り口を利用するまで。
「じゃあー、行ってくるわー」と将生が窓を開けると、
至近距離に女の顔が現れた。
「あいやぁぁあぁぁ~ッ!!」
「うるさい! 叫ばなくても、わかってる!」
ぴしゃりと絶叫する横面を張り倒して黙らせる。
びっくりした。ずぶ濡れの女が窓に張りつきそうな勢いで立っているのだ。
日が沈んだとはいえ、街灯で外の景色は見える。
何より、こんな短時間で研究室のドアから反対側の窓に移動するのは不可能だ。
敷地は広いし、建物自体が入り組んでる。それに別の施設に入出の度にIDを提示しなければならない。
ありえない登場に、心臓が凍りつく。
「いやいや、おかしいって! 何で、窓の外の景色は見えるのに、開けると髪長ずぶ濡れのお姉ちゃんが出てくるワケッ!?」
「だあぁぁぁッ!! わかったから、ハイスピードで開閉すなぁぁぁぁぁッ!!」