特に、展望は持っていなかった。
 このまま心地よい友人関係を続けたい気もしたし、実際に交際するイメージを持てなかったというのもある(互いの生活が不規則なため)。



 ところがどっこい。

 よくある研修会の打ち上げで、おめでたい報告がもたらされる。


 研究所内で、カップルが成立したのだ。


 グッバイ、私の片想い。



 相手の女性は、同期だが有名大学を卒業した才媛だった。
 おまけに美人でスタイルもよく、理知的なユーモアセンスで常に周囲を笑顔にする。


 一緒に仕事をしたい女性の筆頭だ。勝てる気がしない。


 噂レベルではなく、こうしてグッドニュースとして話題になるなら、互いに結婚を意識しているのだろう。
 お祝いムード一色の酒宴から、そっと退席するのは簡単だった。


 暗い夜道を歩きながら、ぐっと唇を噛み締める。

 男の中には、恋人の影を見せたがらないタイプもいるのヨ。
 次からは、もっとよく観察しましょう。


 そんな高い授業料を払ったと思うことにする。