悠長すぎる対応に掴みかかる。

 てか、遥香を呼んだ方がいいのだろうか?
 不審者じゃない可能性が高いんだし。

 なんて、桜沢の弟も同じことを考えてたようだ。


「てか、不審者じゃなかった方が困るじゃん。まさか、怨霊とかだったら警棒で殴れないし……」

「あんた、対応が妙に落ち着き払ってるわねッ!」

 混乱と恐怖で口調がキツくなっている点は、ご容赦願いたい。
 オカルト研究をしてても、実際に体験するとなると避けたくなるのが人情。

 どうにか、この嫌な予感をなくしたい。


 すると、胸ぐら掴まれたままの将生が唇を尖らせる。


「オレだって幽霊や妖怪は、勘弁してほしいってー。……じゃあ、こうしよう」

 ぱんッと手を打ち鳴らし、提案をしてくる。かなり怪しいんだけど。


 それでも、状況を打開するしかないのは明白。
 選択肢や妙案が浮かばない時点では、アイディアは多いに越したことはない。

 そう思って胸ぐらを掴んでいた手を離す。
 自由になった桜沢·弟は入り口の扉とは反対方向へと歩き出す。


「一旦、本部のカメラを確認してくるわ。こっからの窓から行けるよな……」