もはや、極寒の地にいるような気分になった。
具合まで悪くなりかけてるってのに、桜沢·弟はそろそろとドアに近寄っていく。
「何してんだよー。オレも姉ちゃんがいないなら、出てきたいんだけどー」
「腹も減ったし」などと呑気に呟き、センサーの至近距離に立つ。
「待て、早まるな。小僧!」
バトル漫画みたいなセリフを吐くも、遅かった。
ドアは開いちゃったし。
けど、弟もすぐに後ずさりした。
ゆっくりと閉まる扉を見つめる。
ちょっと驚いた表情で、こちらに振り向いた。
「……今のなに?」
「わからないから、部屋を出られないんじゃんッ!」
ヒステリックに叫ぶと、ひとり落ち着き払った雑賀クンが間に入る。
「ふたりとも、どうしたんです。ドアの向こうに何かいるんですか?」
彼は、どうやらずぶ濡れの女を見てないらしい。
ついつい、将生と目を合わせて頷いてしまう。
「……うん」
「……黒髪の姉ちゃんがー、ドアのすぐ側に」
指をさして説明してみるものの、