その瞬間、彼の脇腹に拳を突き入れる。




 ドゴォッ!

「ォぉふッ!」


 そりゃもう。
 抉る感じに。勢いよく。


「触るなって言っただろうッ!」


 拳を固めて怒鳴ってみたところで、なんの意味もない。
 遥香の言ってた封印のお札って、あれのこと?

 人形にも和紙にも、特別に変わった点はなさそうだけど、顔にだけ張りつけてるなんて変よね。


 一度、封印を解いたら手がつけられないとも聞いた。



 あぁ~ッ、どうしよう。
 まさか、こんなアホくさい展開で封印を破ったとしたら。


 その直後、異変が起きた。

 きれいにしたばかりの床に倒れる将生を横目に、ぞぞぞと得体の知れないものが背中に這い上がる。


「な、なになに。この寒気……」


 体調が悪いわけでもないのに、肌を刺すような刺激が全身を襲う。
 あまりの強さに寒気だと思えないくらいだ。


 背中は何かが張りついたみたいに重いし。
 二の腕をさするも、まるで効果がない。



「……オレは、脇腹に鋭い痛みが」

「うん。それは殴られたからだね」

 倒れたままの将生と律儀に相手する雑賀クンは、普通っぽい。