「なに。ふたりとも、もう仲良くなったの?」
「ええ。まぁ……」
「姉ちゃんの助手なら、オレの友達も同然だ!」
曖昧に笑う雑賀クンとよくわからない論理を展開する将生。
まぁ、この弟は友達を作る才能だけはありそうだもんな。
きっと学生時代は、新学期初日でクラス全員と仲良くなってるわ。絶対。
「桜沢さんなら、すぐ戻ってくると思うよ。ここで待ってる?」
「うーん。どうしよっかなー? 今日の飯当番、オレなんだよー」
雑賀クンが椅子を勧めると、意外な悩みで躊躇う桜沢·弟。
いや、それともベタな内容かしら?
遥香の恐怖政治の下、家では炊事をやさられてるとか。
ありえそうなパターンを妄想すれば、将生が箱庭のごとき雛人形の存在に気付いた。
「なんだ、コレ?」
不思議そうに覗き込み、人形へと手を伸ばす。
「待って。それに触っちゃ駄目……」
嫌な予感がしたが、遅かった。
ぺりッ。
将生が、人形の顔に張りついてる和紙を剥がしてしまった。