ヤツも警備員とは思えないくらい、そそっかしいところがある。
 その隙だらけの性分を理由に、遥香は自らの罪をなすりつけるのだ。

 きっと研究所の警備なんかやらせてるのも、ただの偶然じゃないと思う。


 それにしたって、恐ろしい。
 遥香が弟を身代わりにすることは珍しくない。


 都合の悪いことは全部、弟の将生に押しつけ、自分は甘い蜜だけを吸って生きてきた。


 将生にしたって、姉弟の縁は切れないんだから、これ以上、一緒にいることないだろうに。
 今だって爆発実験の犯人に仕立て上げられたってことに、すぐに気付け。


 諦め半分、冷めた視線三割、呆れ二割を含ませて見つめても、彼には通じなかった。


「よー、恭介」

「やぁ、将生」


 何気に、フレンドリーっぽく挨拶する雑賀クン。
 さっきの空気は微塵もない。普段通りの微笑を浮かべている。


 くそぅ。
 こういう時、男って妙に落ち着いてるよな。

 何となく悔しいから、会話に割って入る。