原因は、もちろんさっきの爆発実験に決まってる。中に飛び込んだから、あちこち煤けたのだろう。

 基本、研究所は化粧厳禁という規則で助かった。適当にファンデとかつけてたら、もっと悲惨だったかも。



「はい。とれました」

「……ありがとう」


 怒鳴らなかっただけ、誉めてほしいもんだ。


 期待させやがって。
 グレた歳上女を舐めるなよ。


 ちょっといじめてやる。


「雑賀クン」

「はい」

「ここに座んなさい」

「はぁ……」


 私の固い口調に、何かを察したらしい。
 近くにあったキャスターつきの椅子に腰を下ろす。


 ちょっと怒ってるポイントが違うんだけどね。
 まぁ、いいか。訂正できないし。


「そういうことは、早く言ってちょうだい」


 鞄からハンカチを取り出しながら、唇を尖らせた。
 雑賀クンは、本当に申し訳なさそうに目を伏せる。


「すみません……」

「ただでさえ、元からすっぴんなんだから。汚れたら、ごまかしがきかないでしょー?」

「いえ、そんなことないで……」

「口答えしないの!」

「……はい」