「私は、大事な研究だと思うけど?」
「そうですか?
『専門は【魔素】の成分解析です』って言うと、大抵の人は嫌な顔しますよ。仲間内でも不毛だとか兵器でも作るのかとか、陰口たたかれて」
あぁ、確かになぁ。
内心で、その不憫さに同情した。
どんな研究分野にも、人気のないカテゴリーはある。
聞いた話じゃ、心理学で恋愛の研究をする人はいないらしい。「主な専門は、恋愛です」と言えば、頭がおかしいヤツだと思われる。
ちょっと前まで、日本でオカルトを研究する人もいなかった。
戦後、欧米諸国の合理性や科学的思想を押しつけられた日本人は、数字や金銭などの『目に見えるもの』しか語れないよう、教育された。
これほど言霊や霊的存在を信じる民族もいないのに。
暗黙の了解として、大学の研究機関で扱うことはタブーとされた。
雑賀クンの場合、ちょっと誤解を受けそうな分野だ。
呪術が専門とか思われちゃうかも。あるいは、核兵器並みの発明をしたいのかと恐れられたり。