ちょっとした興味本位だったのだが、モップを持ったまま曖昧に笑った。


「今の桜沢さんと似たようなことですよ」

「え」

 なんだと?
 もしや、あの爆発実験が専門とでも言うのだろうか。
 思ったことが顔に出たらしい。雑賀クンはおかしそうに笑って「違います。そっちじゃないです」と説明し直してくれた。


「呪いのエネルギーみたいな負の力……僕たちの専門用語では【魔素(まそ)】と言います。
 それらの成分を抽出し、解析するのが主な仕事ですかね」


 ゴシゴシと床を擦りながら相槌を打つ。

「あー……警察で言うところの鑑識みたいな分野?」

「そんな感じです。
 除霊をしようと思っても、原因や正体が不明な場合は有効な対応策がとれないことも多いですし、霊障を一時しのぎにするにしても、間違った対応をすれば依頼主どころか霊術士も危険ですからね」


 そんなケースの一助になればいいんですが。


 汚れた床を拭いながら、どこか遠い目をして語る。
 あまり自分の仕事に自信が持てないようだ。