「あぁ、言ってるそばからセクター長の電話が……雑賀、あとは頼んだわよ!」


「……はぁ」


 雑賀クンは、薄いゴム手袋を外しながら(何故? ナマモノ研究してるわけじゃないのに)生返事する。

 片付けを面倒がってるというより、遥香のテンションに戸惑ってるようだった。



「はーい。桜沢です。この度は、すみませ~ん」



 すかさずスマートフォンを耳に当てた親友が、とびきりスウィートな声で謝罪する。器用なヤツだ。


「はい。申し訳ありませ~ん。今から事情を説明に伺います。いえ、とんでもない~」


 怒られてるはずなのに、遥香は幸せそうだ。

 そのまま、スキップみたいな足取りで出入り口のドアへと歩いていく。


「もちろ~ん、実験での損害はないです。部屋も明日までに片付けておきますわ」



 無情にも自動ドアが開閉し、雑賀クンと取り残される。






 嘘だろぉぉぉぉ。