挙動不審だったかと冷や汗を浮かべると、一拍おいて雑賀クンがにこりと微笑んだ。
「こちらこそ。どうぞよろしくお願いします」
穏やかな口調で、優しく握り返してくれる。
おぉ。
なかなかの好青年。
ぐっと上昇する好感度。だが、アラサーに近い女子ともなれば、すぐに冷静さを取り戻す。
いかん、いかん。
失恋の痛手が癒えるまで、爽やか系には気をつけなければ。
なにより、歳下はちょっとねー。
いろいろ理由をつけて、逃げてみる。
しばらく色恋沙汰は、ごめんだ。
これ以上、わざわざ自分からトラウマを増やすこともなかろう。
きっちり防衛線を張ったところで、遥香があっけらかんと告げてくる。
「じゃ、ふたりとも片付け、お願いね」
「はあぁぁぁッ!?」
おい。何言ってんだ。
この姉ちゃんよォ。
これは、てめぇの失敗だろぉ?
殺気にも近い視線で訴えるも、言い出しっぺの彼女は何故かルンルンだった。
「わたし、これから加納セクター長に事情を説明しに行かなきゃならないのよォ」
遥香の満面の笑みで、脱力する。