疑わない人の良さに、少しだけ苛立つ。
 というか、幻滅だった。

 もし、これが中澤の陰謀だったら確実に失脚して、干されるだけ。
 世渡り下手なお坊ちゃんにしか見えない。


 まぁ、ただの勘違いかもと食い下がってみる。


「……だって、まるで左遷みたい。あなたの研究は最先端の設備が整った場所じゃないと」

「考えすぎだよ。そんなこと、する意味ないし。彼、もうすぐ研究室を辞めるんだから」

「……どういうこと?」


 仕組まれたものではないときっぱり否定する。
 その根拠は、別のところにあるらしい。


「中澤さん、結婚するだろ? 相手が第三研究所所長の娘さんだから、あっちに移るらしい。後任は井上さんじゃないかな」

「なッ……」


 彼のぼやきに、眉が跳ねそうになる。
 思ってもみない展開に驚き、イラついた。


「あの娘、私と同い年よ!? 特別なコネもなしに、三十前で研究室を持てるなんて聞いたことないわ」

「うーん……けど、彼女なら実力は申し分ないし」

「実力?」


 どういう意味だ。

 私の方が学歴が上だし、専攻だって特殊霊具の開発という将来性のある研究だ。