「あら、そうなの?」

「近県の美術館で、企画展が気になってて……そしたら、将生くんがチケットを……」


 あぁ、そのチケットを予約したのは、わたしだ。
 美術とは無縁と思ってた猿が、いきなり頼んできたから驚いたわ。


「将生くんも、あまり土地勘のない知らない場所をドライブしたかったらしくて」


 そうね。
 あいつの目的は、そっちね。
 ついでに根っからのO型だもの。道に迷って無駄な時間を過ごしても、冒険みたいに楽しむから。


「でも、帰りが遅くなって道にも迷ったから……」


 やっぱり。
 お約束な展開。



「ホ、ホテルに泊まったんですけど」


 おぉッ!
 やるじゃないか、弟!


 計算したとは思えないから、素晴らしいぞ!



「それで、あの……ふ、ふたりで寝ることになって、わ、私」



 ……うん、うん!
 そのあとが気になるんだよ!


 ぐっと固唾を呑んで待つこと十秒、






 玲奈が三つ指ついて頭を下げてきた。


「ご、ごめんなさい。だから、デートじゃないんです」


 かくんッと身体の力が抜ける。
 いや、それがデートかは問題ではなくて……