「じゃ、早くシャワー浴びて来ちゃいなさいよ。ふたりして」
マンションの一室に着くなり、わたしの開口一番はそれだった。
相対する弟は怪訝そうな表情を浮かべる。
「……姉ちゃん。それ、どういう意味?」
散らかり放題の部屋に腰を下ろし、疲れた視線を返してきた。
もちろん、わたしはにべもなく答えた。
「だから、まだ身体の魔除け、落としてないでしょ。ついでに、お風呂入っちゃいなさいよ。ふたりで」
腰に手を当てて、偉そうに命令する。
拓真さんに頼んで書いてもらった魔除けの文字。さっさと帰ってきちゃったから、そのままだ。
落とすついでに風呂に入れというのに。
心優しい気遣いを、弟たちはあくまで噛みついてくる。
「俺、飯の用意が……」
「うん。待ってるから」
「代わりに姉ちゃんが作るという選択肢は……」
「ないわね。面倒くさいし」
「人間が食事するのは自然の摂理じゃんよ。その手間を惜しむってのは、ちょっと……」
「何、ごちゃごちゃ言ってんの。風呂上がりにパパッと作れば、いいじゃない」
「当たり前のように、めっちゃ矛盾してますけどッ!?」