話せば話すほど、興味が湧いてくる。
 引き返せなくなる前に逃げたいのに、それを許してくれない。

 いや、逃げられないのは私が意志薄弱だからで。
 ぐるぐると思考が堂々巡りを繰り返してる。
 無限のループから抜け出そうと躍起になってる途中、雑賀クンのからかうような声で我に返った。


「井上さんだって、わりと馴染んで楽しんでるでしょう。ここの環境に」


 失礼な。
 私は、いつも巻き込まれてるだけですよ。

 それを馴染んでるだと?
 勘違いも甚だしい。


 むっと頬を膨らませてはみたけど、言い返す気にはなれなかった。



「……そうね。退屈だけはしないかな」



 本当に、毎日が騒がしい。
 失恋しても、憂鬱な気分が吹き飛ぶくらいには。


 これって感謝すべき?


 斜に構えて皮肉るくらいの余裕はある。


 なんてことを言外に含ませてみれば、雑賀クンがとてもおかしそうに笑う。


「そう言える井上さんって素敵です」

「またまたー。そっちこそ、うまいこと言ってー」

 近所のオバサンみたいなノリで、大げさに返す。