「実利主義というか、競争主義というか……研究室同士は、もちろん助手もライバルなんです。
誰にも自分の研究は明かさず、それでいて同僚の研究は盗み見るような場所で……いつも施設内全体がピリピリしてました」
「あ、そっか。そうだよね」
噂には聞いていた。
国立の名に恥じぬようにと、第四研究所の所長は徹底的な競争社会を目指した。
結果とアイディア、利益が全て。
五つある研究所で最も優秀な研究者が多いけど、短期間に退職する新人も多いようだ。
中には、精神を病んだ者もいるとか。
そんな場所で研究を続ける意味が見出せなかったと雑賀クンは言う。
軽く口にしてるけど、私の想像以上につらい職場だったろうに。
実力だけしか評価されないところで魔素の研究をしていたらと思うと、切なくてやりきれない。
これも同情なんだろうか。
慰めの言葉なんか浮かばない。口にしたところで迷惑だろうし。
そもそも、雑賀クンの気持ちを推し量ってる自分が嫌で。
嫌な理由は、おそらく彼を知りたがってるから?