ただの同僚を一時間も待ってたの?
 他の皆は帰ったからって、置いてってもいいのに。

 メモ書き残したり、後でメールすればいいだけなんだし。


 少しだけ胸が温かくなるのに、わざと気付かないフリをした。

 嫌な性格だな。これじゃ、お礼も言えやしない。



「一緒に帰りましょう。立てますか?」

「うん……あ」


 手を差し出され、寝台から立ち上がるものの、
 くらりと目眩がして、前へ倒れ込む。


 うっかりふらついて、雑賀クンの胸にぶつかる。

 低い鼻を指先で押さえながら、距離をとった。


「待たせて、ごめん。でも、もういいよ」



 もう少しだけ休んでから、帰るから。
 大丈夫だから。


 遠回しの拒絶。

 さっきまでのドタバタじゃ、深刻に考えるまでもなかったけど。
 やっぱり、このままではまずい気がする(主に、私が)。



 これだけ、アピールすれば普通なら察してくれるよな。
 鈍いタイプには見えないし。

 もう期待するのは疲れた。しばらくは周囲の騒々しさで忘れたい。