寂しいとかもないな。
 ただ呆れるしかない。



「あ、雛人形……」

「魔素を取り出したら、すぐ見つかりましたよ。もう悪さはできません」

 注連縄を張った結界の中には、顔面をお札で巻きつけられた人形が二体。
 どちらも、魔素エネルギーを吸い尽くした直後、物音と共に出現してきたという。

 まんまホラーのエンディングね。
 当然、呪いの力がなくなったわけでもなし。けど、これに懲りて遥香も扱いには気をつけるだろう。


 と、ここで違和感を覚える。



 ……ブラウスのボタンが、元通りだと?



 記憶を失う直前には、胸元がはだけてクリームだらけに、電極を繋いでたはずなんだけど……


 まさか、という目で雑賀クンを見つめてしまう。
 がくがくと震える手で胸元を掴む。



「……大丈夫です。見てませんから」


 私の懸念を察したらしい雑賀クンが、狼狽えながらも否定する。



「直したのは、三城さんです。
 魔素を抽出したとわかった桜沢さんは、あとのことは興味が失せたようで。片付けを命じられた時には、どうしようかと思いましたよ」