熱に浮かされたように。


 ぐるぐると悪夢の中を彷徨って。

 少しの息苦しさに、まぶたを開けると。



「あ。目が覚めました?」


 柔らかな笑顔が覗き込んでくる。



「大丈夫ですか?」

「さ、雑賀クン……?」


 助けを借りて起き上がる。
 どうやら彼の膝の上で気を失ってたようだ。

 雑賀クンが手にしてる科学雑誌で、かなりの間、眠りこけていたとわかる。


 申し訳なさすぎで、頭がうまく働かない。
 確か、雛人形の魔素を取り出そうとして……



「あれから、どうしたの? 皆は?」

 きょろきょろと辺りを見回しても、誰もいない。
 あれだけ寒かった研究室は、しんと静まり返っている。
 気温も正常に戻っていた。悪寒もしない。


「人形の魔素は抽出できたんで、桜沢さんたちは帰りましたよ。セクター長は今頃、事後処理じゃないでしょうか。停電とかの」


 うわ。
 この薄情者どもめー。


 あっさりと目に浮かぶわ。
 腹が減ったから帰ろうとか言って、ぞろぞろ退出する絵面。

 ここまで清々しいとムカつきもしないわ。